父の運転する車の後部座席で、ラジオから流れてきた知らない歌に聞き入った
どうしても仕事が終わらず、休日出勤をすることになってしまった日。
休日にも関わらず、浮かない顔で出勤の準備をしていた私に、父が声をかけてきた。
「職場まで送ろうか」
折しも雨が降っており、電車で行くのも億劫だなぁと思っていたところへ。
しかし、父だって休日なのだ。申し訳ない…と迷っていると、
「いくぞ」
と車の鍵を持って。
車の後部座席に乗り込み、ぼんやりと流れる街を見ていると、ふとラジオから流れてきた曲が耳に入った。
落ち着いたメロディーに、ちょっと暗めのハーモニー、盛り上がるサビ。
聞き入ってしまってから、慌ててその曲を探そうとしたが、洋楽だったので歌詞の一欠片すら情報がない。
どうしても曲の名前が知りたい、もう一度聞いてみたいと考えて考えて、ふと、そのラジオのホームページにアクセスしてみた。
ラジオのホームページの中には、タイムテーブルと曲のリストが乗っていた。
「今流れているのはこの曲!」
という情報をみつけた。
さっきの曲から既に2曲が終わっていた。
遡ってみつけた曲のタイトルを検索してみると・・・
「みつけた・・・!」
今でもスマホの中に入っているその曲を聞く度に、雨の景色と、なんとなく気遣うような父親の優しさを思い出す。